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COLMUN
元テレビ朝日台北所長の海外放浪記 
四方見聞録
~摩天楼から一膳飯屋まで~
~世界が、人が、そして心が見える~

優雅にして華麗な日本留学生活 中国人留学生M資金の謎を追う!(2)
中国青年が見た台北⑤

台湾

2019.05.20

Mの華麗にして優雅な日本留学生活を支える財政を紹介して台北篇の最後としたい。
初来日の際、Mは来日既に10年を超える親族の家に寄宿していた。その親族の長は東大で教職にあり、その一家はベイエリアに購入したマンションに住んでいた。旧正月を挟んだ10日ほどの間、Mと両親は2泊で伊豆、箱根などお定まりの観光コースに出かけただけで、それ以外は東京観光を楽しみ、昼間は一家で浅草寺や銀座など、こちらもお定まりの都内観光を楽しむ。そして夜になるとMはいそいそと一人抜け出しては新宿、渋谷などを徘徊。若者向けのバー、クラブなどで夜通し遊んでいた。その合間のある日、M一家はなぜかベイエリアへ出かけた。何をしていたのか特に興味もないので、その日はアテンドもせずにほっぽらかしていた。
Mが帰国して1月ほどして、上海に用事があって出かけた。そのついでにM一家が住む江陰に足を伸ばした。上海虹橋空港からバスに揺られて2時間ほど、高速を降りて菜の花が咲き始めた長閑な田園風景を楽しんでいると江陰郊外のターミナルに着く。迎えに来てくれたMは自家用車で街の中心部に連れて行ってくれたが、その道すがら一寸待って、と小さな商店の前に駐車して中に入って行った。
「何買ってきたんだい?」
訊ねるとポケットから印鑑を出す。何に使うのかと更に訊ねると、にやにやと笑いながら答えた。
「来週、上海に出かけて契約するんだ。東京のマンションの、ね。日本は何でも印鑑がないと駄目なんでしょ」
更に訊きこんでみると、なんと空白の一日にベイエリアのマンションのモデルルームを訪ね、さっそく気に入って仮契約をしてしまったのだという。車には余程そのマンションが気に入っているのか、パンフレットが積み込んである。見れば銀座から歩いても20分ちょっと、築地からなら15分とベイエリアでも交通至便。2020年東京五輪選手村近くの新築、ではなく間もなく完成というタワーマンションだった。中国人は給料の額を同僚同士で話題にするほど開けっぴろげである。購入価格をしれっと訊いてみれば、億まではいかないものの、それに近い数字を返してくる。面積は60平方米ちょっと。これはお買い得だと直ぐに感じた。一人で住むにはちょっと贅沢ではあるが、中国の大都市では3人ないし4人家族で100平方米を越えるマンションに住んでいるケースも多いので、まあ、そんなものか、と妙に納得した。
「明日、東京に着くよ!」
Mから微信(ウィーチャット、中国で最も使用されているSNS)で突然の連絡があったのは、それから半年たった秋口のことだった。中国人は事前に余裕をもって連絡してくるは滅多になく、藪から棒が日常茶飯事。仕方なく翌日パリに出かけるスケジュールのなか何とか時間を作って、MがAir-Bnbで予約した民泊に訪ねた。今後の予定を訊いてみれば、その週の内に日本語学校の入学手続きをして学校手配の郊外のアパートに入居する、というではないか!
「マンションどうするんだ?」
「それはね……」
ニコニコしている。
「貸して家賃とるんだ。25万くらいになるってさ」
M一家は学費、生活費に当てることを決めてマンションを購入していたのである。
「だって、あの金額じゃあ上海の掘っ立て小屋くらいしか買えないよ。大学を出て東京で仕事見つかれば自分で住んだっていいし」
爆笑するMを見て、天晴れと脱帽するより他なかった。入学後、バイトもせずに飲み歩くMを新宿のバーに訪ねてみれば、同学に中にも同じケースはままあるという。金満中国人まことに天晴れである。億近い金をポンとはたき実に合理的な投資に使う中国人には、まっこと以て敵わない。
億近い金をはたいても掘っ立て小屋しか買えないという恐るべき中国の不動産市況は稿を改めて、いずれご紹介致したい。今夜もMは紅灯の巷で楽しく盃を重ねていることだろう。

甘粕代三(あまかす・だいぞう)
1960年、東京は隅田川の畔で生まれる。早大第一文学部在学中に中国政府給費留学生となり大陸へ2年遊学。東京新聞記者、テレビ朝日台北・マニラ支局長、サンデープロジェクト・チーフディレクター、朝まで生テレビ・プロデューサーなどを経て売文業。アジアを中心に世界各地を流浪、日本、香港、台湾、大陸で時事、競馬評論を展開中。