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海外不動産投資コンサルティング

MARKET UPDATE

Service apartment: Development and Trend in Japan
日本におけるサービスアパートメントの開発とトレンド

日本

2017.07.19

積水ハウスが赤坂でサービスアパートメントに着手

ハウスメーカー大手の積水ハウスが、東京の赤坂5丁目エリアで高級サービスアパートメント事業の開発に着手すると報道がありました。本件の正式なプレスリリースは昨年でしたが、いよいよ本格的にプロジェクトがスタートするようです。

今回のサービスアパートメントは、シンガポールの不動産大手であるフレイザーズ社と共同で行われます。外国人観光客、外国人ビジネス客で近年増加するホテル需要や、東京オリンピックを見据え、2020年の開業が予定されています。


サービスアパートメントとは?

サービスアパートメントとは、コンドミニアム(日本でいうマンション)とホテルのちょうど中間にポジショニングされます。富裕層の長期滞在を目的としており、ホテルのようにリネンの交換やハウスキーピングのサービスが提供されます。レストラン、24時間対応のジム、ビジネス利用を目的とした会議室の併設など、長期でも快適に滞在できるような施設があることが特徴です。また、ホテルとは違い、多くの場合室内にはキッチンスペース、ダイニングスペース等が完備されています。

日本では2003年に六本木ヒルズレジデンスが開業するまで、サービスアパートメントは一部の外国人駐在員向けを除いてはあまり馴染みがありませんでした。その後東京ミッドタウンや丸の内エリアにも高級サービスアパートメントが開業しましたが、現在でも欧米、東南アジア、中国などの都市と比較をして日本ではまだサービスアパートメントの件数が少ないのが現状です。

6月6日のMARKET UPDATE「日本におけるインバウンドブーム」では日本の大手デベロッパーが相次いでホテル開業に着手していると紹介しましたが、サービスアパートメントも、現在大手デベロッパーが参入をはじめている分野のひとつと言えます。大和ハウス工業も2020年春に東京の西新宿で複合施設を開業することが決まっており、一部はサービスアパートメントとして運営されます。投資額は400億円の見通しです。


日本のサービスアパートメントの賃料は?

サービスアパートメントは賃料に関してもコンドミニアムとホテルの間の価格帯が設定されることが多く、例えば同じような部屋面積の高級ホテルに1カ月宿泊したら100万円以上かかるところ、サービスアパートメントでは50万円などのように、長期滞在ならではの割安感があります。

東京都内にいくつかある高級サービスアパートメントは1LDKで30万円~50万円程度、2LDKで50万円~100万円程度、3LDKで100万円以上のような賃料相場です。 賃料の中には水道光熱費、インターネット環境設備、リネン交換、ベットメイキング、室内のクリーニング費用等が通常含まれています。


外資系パートナー企業と共同で開発・運営

冒頭で紹介した積水ハウスとフレイザーズ社との共同事業は既にいくつか実績があり、有名なのはオーストラリアのシドニーでの複合開発「セントラルパーク」です。壁面緑化と空中庭園を取り入れたユニークな建物は「世界一」の評価となる「Best Tall Building Worldwide(世界最高の高層ビル)」を受賞しました。

上記のように海外での開発は海外のパートナーと組んで事業を行うとしても、日本での開発・運営は物理的には日系デベロッパーが単独で行うことも十分可能なはずです。積水ハウスは既にザ・リッツ・カールトン京都やセントレジスホテル大阪などの高級ホテルを手掛けており、富裕層向けの開発ノウハウを持っています。それでも積水ハウスがフレイザーズ社と共同で事業を行うのは、外国人富裕層をターゲットにした運営ノウハウを取り入れたいという事と、フレイザーズ社の持つブランド力を活用したいという2つの目的があります。

今回赤坂に建設を予定しているのは、フレイザーズ社の中でも最高級ブランドである「フレイザースイート」です。現在フレイザースイートは、パリ、ロンドン、ジュネーブ、シドニー、シンガポール、北京、蘇州などで展開されており、各都市の富裕層に対する安定した知名度があります。

同じ目的で、三井不動産はオークウッド社と、三菱地所はアスコット社と共同でサービスアパートメントの運営をしています。日本では知らない方も多いこれらの会社のブランドは、海外では一定の知名度があります。

大和ハウス工業が2020年春に開業する予定のDタワー西新宿に関しては今のところ外資系パートナーの運営等は予定されていないようですが、下層階には保育所を配置するなどの差別化戦略を打ち出しています。


まだ参入の余地が残されているサービスアパートメントの分野で各社がどのような開発・運営をしていくのか、今後が注目されます。

記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)