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海外不動産投資コンサルティング

MARKET UPDATE

Mitsui Fudosan enters Philippine property market
三井不動産がフィリピンに進出

フィリピン

2017.08.24

ASEANで実績のある三井不動産がフィリピンでの開発を発表

三井不動産が、フィリピンの上場不動産会社であるロックウェル・ランド社と共同で高層住宅の建設をするというプレスリリースが同社のホームページ内で発表されました。アジアでは既にマレーシア、タイ、シンガポール、インドネシアにおいて住宅と商業施設を開発している実績がある三井不動産がフィリピン進出するという事で、フィリピン国内のメディアでも取り上げられ話題になっています。

ケソン市で1,706戸の分譲住宅開発

総事業費は日本円で約195億円。マニラ首都圏の最大の行政区であるケソン市で、面積1.8ヘクタールの広大な敷地に、3棟構成で総戸数1,706戸の分譲住宅の建設事業が計画されています。空地率を約80%確保した緑豊かなプランニングが予定され、丘の上に所在する敷地からは優れた眺望も享受できるという事です。さらに、計画地はフィリピン大学・アテネヨ大学・ミリアム大学と3つの名門大学に近接し、病院や高度研究機関が立地し住宅需要が高まっているエリアです。

今回三井不動産がフィリピンに進出する理由として、「フィリピンはASEAN諸国の中でも高位安定的に経済成長(2016年GDP成長率6.8%)が見込まれ、中長期的に住宅市場規模の拡大が期待される有望なマーケットです」とコメントがプレスリリース内に記載されています。2014年に人口1億人を突破し、2030年前後には日本の人口を追い抜くだろうとされているフィリピンは、他のASEANと比較をしても人口ボーナス期が長く(2050年まで続く予定)、魅力ある市場とされています。

三越伊勢丹ホールディングス(HD)、野村不動産もフィリピンに進出

人口増加と経済成長に支えられた住宅需要を背景に、マニラでは現在数多くの不動産開発が進められています。三井不動産以外でも、三越伊勢丹ホールディングス(HD)、野村不動産が、フィリピンの不動産大手フェデラルランドと合弁会社を設立し、フィリピンで不動産開発を始めるという発表がありました。マニラ首都圏の再開発地区ボニファシオ・グローバル・シティで、商業施設を併設した高層住宅4棟が建設される予定です。

建設現場では人材不足が問題に

JLLが今月発行したレポート、Asia Pacific Property Digest Q2 2017によると、'The residential market sustains stable growth due to strong demand for condominium units'(コンドミニアムに対する旺盛な需要があり、住宅マーケットは堅調である)という事で、マニラの不動産市場が安定している事がわかります。昨年と比較をするとマニラ市内のコンドミニアムの賃料は平均して3.7%上昇しました。ただし、賃料の伸び率に関しては、昨年までと比較すると鈍化しています。また、同レポートでは、職人がスキル不足であるという指摘もされています。工事に関わる現場の職人に十分な経験が無いため、工期が予定よりも伸び、プロジェクトの竣工が大幅に遅れていることが現在マニラ市内で問題になっています。住宅や商業施設の需要を受け、デベロッパーが各所で開発を進めていることが原因で、建設現場では慢性的な経験者の人材不足が続いているようです。

弱いペソはOFWの不動産購入に追い風か?

他国と違う特徴としてフィリピンの経済を考える上で考慮しなくてはいけないのは、OFW(Overseas Filipinos Workers)と呼ばれる、フィリピン国外で働くフィリピン人の存在です。人件費が安いフィリピンを離れ、主にアメリカなどで労働をし、自国フィリピンに仕送りをして家族の生活を支えている人たちがいます。この層は全人口の約1割にもおよびます。

給与をフィリピンペソ以外の通貨で得ているOFWにとって、現在のフィリピンペソの通貨安のトレンドも、自国の不動産を購入する強い動機になっています。

上記のようなOFWの購買意欲、フィリピン国内の経済成長による中間所得層の伸びという国内外のトレンドに支えられ、コンドミニアム需要は今後も続くと考えられています。

需要もあるが、大量の供給も予定されている不動産市場

マニラでは2017年の後半に約5,800戸の新築ユニットが供給される予定で、その後も大規模プロジェクトの竣工による供給が続きます。これにより、平均空室率も引き上げられるだろうと予想されています。今後のコンドミニアム需要を確実に取り込むため、各デベロッパーがどのようにプロジェクトを進めていくかが注目されています。

記事提供:三宅美子(Yoshiko Miyake)